※ゆーろどん。さんの蔵出しコラムを修正するコーナー

 

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悪魔が踊るロゴマークで有名なFLEAレコードは、

イタリアの名門レコードメーカー・ALABIANCA傘下のレーベルです。

まあネットで検索すればその成り立ちが見つかるのでしょうが、

どうせイタリア語で書かれてるに違いないので

ここはCDのブックレットに記載されている話を参照することにします。

 

なんでも、86年にトニー・ベローナさんがフロリアン・ファディンガー、

マウリチオ・ベッテリーさん達と共にアラビアンカを設立したのだそうで…

時期的に言えば日本でもユーロビートが一般に広まり始めた頃のことですね。

 

FLEAレーベルの楽曲は大きく

初期、Farina & Crivellente期、DAVE期、HAVANA期

に区分されるような気がします。 いやもうそういうことにしておきます。

 

初期は比較的短い期間ですが、リアル・アーティスト中心であった印象が。

他のレーベルにも言えることですけど、当初は実在のアーティストがいたらしいのに

後になるとすっかりプロジェクト・アーティストと化し、プロデューサーの変更と共に

なかのひとまで変わってしまう、というユーロビートによくみられる困った体質が

このFLEAにははっきりと表れている感じです。

 

例えば「BLUE SUNBEAM」はイタリア出身の

E. Restle、C. Moroder、L. Georgeの三人からなるグループ、

ということでしたが、その後なかのひとは期毎に変更されているようです(三度?)。

DANDY、VALENTINO、KING KONGなどもそうなのでしょう。

 

THE CAESARS' DANCERSなど初期のアーティストおよび楽曲は

日本のコンピレーションで取り上げられることはほとんどなく、

私のような国内CDしか聴かない人間にとってはまったく謎の存在なのですが

おそらくはハウス寄りの曲なので…当時の日本人の嗜好にはあわないと判断され

ユーロ・コンピには収録されなかったのでしょうか。

 

とはいえ、1987年の作にはDAVE RODGERSの名前もクレジットされていて

すでにこのレーベルがユーロビート方面に向かうであろうことが予想されます。

同様に名前が載っているRenato Giorgiという方も正体が不明ですが、

92年の(DAVEがらみの)KING KONGの作品までその名前が確認できることから…

実在の人物とすればM. BettelliさんとともにFLEAに長く関わっている人物といえます。

また、どうもイタリアだけでなくドイツの作家さんによる作品もあったようです。

Sven Vathさんがヴォーカルを担当しているらしいグループのOFFの楽曲などは

その後テイチクさんのコンピに収録されたりしているみたいですけれど…

これまた日本ではなじみの薄い方々ではあります。

 

ROSSやCHIP CHIPなど、BMSレーベル(この辺の絡みもわからないなあ)に

縁のあるアーティストも隙を突いて(?)リリースされているようですが

続くFL-8333あたりからFarina & Crivellenteさんらの名前がぼちぼちとクレジットに

見受けられるようになります。 これも87年頃のことでしょうか。

 

すでにTIMEレコードでも楽曲を制作していた彼らは、友人関係であったよしみで

87年設立といわれるこちらもアラビアンカ傘下の(あれ、そうでしたっけ)

アジア・レコードに所属していたそうですが、同時にFLEAにも曲提供するようになります。

「TONIGHT / VALENTINO」ではLaurent G. Newfieldさんも

すでに参加しているようですね…

 

国内でいち早くFLEAに目をつけたのがアルファさんで、Farina & Crivellenteさんらが

手がけた一連の楽曲群は、コンピレーション「That's EUROBEAT」シリーズに収録され

初期のユーロビート・ブームを盛り上げました。

 

AVEXさんが輸入販売していたFLEAのコンピレーション『HITALO BEAT MIX VOL.1』

も、当初は分割されてこの「ザッツ・ユーロビート」に収録されていたみたいです。

(さらにその後JIMCOさんにて合併収録)

 

この時期の主な作家はもちろんMauro Farina & Giuliano Crivellente

(Aston & Martin、Falcus & Vangok)で、代表作は

 

「UPSIDE DOWN / COO COO」 ( M. Farina - G. Crivellente )

「TAKE A CHANCE / MALCOLM J. HILL」 ( Falcus - Vangok )

「EVER AND EVER / VENICE」 ( M. Farina - G. Crivellente )

といったところでしょうか。

 

男性ヴォーカルはほとんどFarinaさん自身が務めていて(名義多過ぎ)、

たまにGino Cariaさんなんかが参加しているようです。

(S. OlivaさんらとともGIORGIA MORANDIにも曲提供)

「JUMP FOR JOY / GIORGIA MORANDI」

( G. Caria - S. Oliva - S. Piritelli - M. Farina )

その楽曲ではなぜかVIRGINELLEさんらしき女性の声も…

 

こうして見るとこの時期女性ヴォーカルの曲は意外に少なく、

中でもまれにClara Moroniさんなども歌っていたと思われます。

(ROSS、CHIP CHIPもいつの間にかFarina組に吸収)

 

一方、現在HI-NRG ATTACKで活躍しているClaudio Accatinoさんも

FLEAにおいていくつかの名作を残しています。

 

「YOU CAN SET ME FREE / COO COO」

( M. Farina - G. Crivellente - C. Accatino )

「BOOM BOOM DOLLAR / KING KONG & THE DJUNGLE GIRLS」

( M. Farina - G. Crivellente - C. Accatino )

他にはLuciano Favarin、Vincenzo Caruso、Adriano Caglioni

といった作家さんも曲を書いていて

 

「EYES OF ICE / THOMAS & SCHUBERT」

( L. Favarin - V. Caruso - M. Farina )

「BEFORE THE NIGHT IS GONE / BLUE SUNBEAM」

( A. Caglioni - M. Farina )

などは派手さはないものの、じわっとくる隠れた名曲ではあります。

 

全体の傾向としては…ASIAに比べると受け狙いの部分は少ない感じですが、

曲自体の良さが認められてヒットした、というイメージの曲が多いですね。

 

…89年から90年になろうという頃、ここが大きな節目になります。

 

89年後半、F.C.F.はASIAレコードをアラビアンカから独立させた、ということですが

ミキサーはGelmettiさんからJ.J. Nestyさんに切り替わり

(「FALLING IN LOVE / VENICE」あたりが境でしょうか)

音にも大きな変化が現れます(個人的にはちょっと薄っぺらくなったような気が…)。

 

同時にFLEAの収録権もアルファさんから東芝EMIさんに移り、この混乱期にリリースされた楽曲のいくつかは国内未収録となっています。 ギギギ…

 

ここで一度日本国内での出来事を時系列でまとめてみると…

 

この移籍混乱期が記憶では90年の春頃。 おそらく5月あたりまでだったかと。

Farinaさんが「SANTA CLAUS」名義を使い出したのもこの時期です。

(国内収録は90年11月くらい?)

 

続いてGelmettiさんのソロ・デビュー作?といわれる

「BANG BANG / FRANK TORPEDO」リリースが90年7月頃。

(国内発売は90年9月)TIMEに完全移籍、というところでしょうか。

 

そしていよいよFLEAもDAVE期に突入するわけですが、

彼がアレンジに参加したらしい「KISSY KISSY MAMA / LULY TUCKER」が

同じく7月頃に日本に届き始めます。

東芝EMIさん移籍第一弾である『EUROBEAT BOX VOL.1』の発売も90年7月です。

どうしたわけかこの時期、イタリアと日本での発売のタイム・ラグがほとんどなくなり

「LOVE & AMERICAN DOLLARS / KING KONG...」にいたっては

12月に日本先行発売(本家イタリアでの発売は91年1月)になっています。

 

…DAVEのこの時期の動向もよくわからないのですが、

おそらくTIMEとケンカ別れしたあとにFLEAに参加するようになったのでしょう(89年?)。

ちなみに彼の曲のデモテープをアレしたと噂の

「BLACK POWER / MAIO & CO.」 ( A. Puntillo - R. Arduini )

のTIMEでのリリースが90年末(12月かな?国内発売は91年2月)らしく、

先出しされたイメージがあったのですが…そうでもなかったみたいですね。

 

A-BEAT Cレーベルの設立が確か90年6月で、

その楽曲が日本で知られ始めたのは90年の夏ごろ(8月?)でしたから…

FLEA参加時期はA-BEAT C設立後とも重なっているようですが…掛け持ちしていたのか?

それともFLEAにまとめて提供した曲が細々とリリースされ続けていたのかしら…

(いずれにせよこの時期のDAVEにはオリジナルのストックがかなりあったらしいです)

 

ただ、前述の「LOVE & AMERICAN DOLLARS」あたりから

プロデューサーはG. PasquiniからFrankie Lee氏に交代することになります。

面白いのは、国内CDでは依然G. Pasquiniのクレジットのままであるにも関わらず

本国のアナログではほとんどの盤において変更になっている、という点です。

(すべての "Frankie Lee" がDAVEのことを指すのかは不明ですけど…)

これが、あくまでもA-BEAT Cをメインとだとする彼の意思表示かどうかはわかりませんが。

 

 

東芝EMIさんは比較的漏れも少なく収録してくれましたが

(初期のショート・ヴァージョンでの収録はいただけませんけど…)

それでも収録曲数の問題からか、この期間数曲が国内未発表となってしまっています。

(あ、たまにシングルCDのみのリリースという凶悪な?フォローもありましたね)

もうあと一枚くらいコンピが続いていればなあ、と思わずにはいられません…

リリース枚数は少なかったものの、どれも充実した内容ではありましたが。 無念。

 

 

この時期の制作はもちろんGiancarlo (Giuseppina?)Pasquiniがメインで

単独制作曲も多いですね…

「DREAMING / BLUE SUNBEAM」 ( G. Pasquni )

「EASY LOVER / COO COO」 ( G. Pasquni )

ヴォーカルはやはりDAVEが自らFLEAの看板名義・新名義を乱発。

他の男性ヴォーカルとしてはKEN LASZLOさんが頑張っていて、続くHAVANA期も主力として活躍しています。 彼もFLEAを代表するアーティストと言えるでしょう。

 

女性ヴォーカルとしてはDOMINOさんがメイン。 

お忍びでの活動、というわけではなかったようで、ジャケットには堂々とご本人の写真も。

(一方DAVEの方はモデルばかり使用)

Claraさんもまた、他レーベルでの活動の合間をぬってヴォーカルを務めていました。

 

 

ライターの面では、Marco Gulinelliさんも参加楽曲は多いですが

DAVE移籍後も残留?してFLEA楽曲の制作を続けていたみたいです。

 

「KING KONG / KING KONG & D.J.UNGLE GIRLS」( G. Pasquni - M. Gulinelli )

「FOR LOVE / CAROL LEE」 ( G. Pasquni - M. Gulinelli )

 

 

また、Gino Cariaさんも一部楽曲に制作参加しているようです。

(ヴォーカル参加はなし…かな)

「BAD MAN / KING KONG & D.J.UNGLE GIRLS」( G. Pasquni - G. Caria - M. Gulinelli )

古い?ところではF. Di BonaventuraさんもStefano Comazziさんとともに曲提供。

(こちらもヴォーカルは担当してない…か)

「LOVE GAMES / VENICE」 ( Di Bonaventura - Pasquini - Comazzi )

 

他には前述のMaurizio Bettelliさんのお名前も。

「RUN TO ME / MALCOLM J. HILL」

( G. Pasquini - R. Giorge - M. Bettelli )

 

同時期にはF. DiaferiaさんとF. Rizzoloさんの楽曲もリリースされていましたが、

DAVEはこちらではミックスダウンでの協力となっているようです。

ヴォーカルはどうもBRIAN ICEさん自らが担当してるらしく…

「YOU ARE THE SUNSHINE / VALENTINO」 ( F. Diaferia - F. Rizzolo )

 

また、この時期L. Raimondiさんも関わっているようで、

このFLEAでの期間はやはり「プレA-BEAT C」と呼んでもいいんじゃないかと思います。

 

そしてFL-8484、「WHEN I'M WITH YOU / LILAC」あたりからいよいよ末期の

HAVANA PRODUCTIONS期に突入します。

名作に恵まれながらも国内収録状況の点では最も不遇であった時期です。

 

 

主要メンバーはAlberto Benati、Sergio Dall'Ora、Stefano Castagnaのお三方。

「COME ON, COME ON / DONNA LUNA」

( S. Dall'Ora - M. Gulinelli - A. Benati - S. Castagna )

「BIG SAMURAI / ROBOT MAN」

( S. Dall'Ora - M. Gulinelli - A. Benati - S. Castagna )

 

などがヒット曲として知られています。

 

このようにイケイケ路線の印象が強いHAVANA期ですが、

実はDAVE期に負けず劣らずのアグレッシヴ&哀愁ナンバーも得意としており、

ヴォーカルにはGino Caria、Gianni Coraini、Emanuela Gubinelliといった

最強のメンバーを揃えたこの時期の楽曲は、神懸かり的なクオリティーだったといえます。

Dall'Oraさんは続くTIMEでの活動で広く名前を知られるようになりましたが、

この時期の彼は本当に輝いていました。 私はこの頃が今でも一番好きですね…

 

しかし…91年末、ANNERLEY GORDONさんがヴォーカルだといわれる

「MAKE ME LOOK IN THE MIRROR / TIFFANY JONES」

( Persona - Puntillo - Oliva )

(こちらも一応Frankie Leeのプロデュース。 ここでPuntilloさんと絡んでるなあ)

あたりを最後に、東芝EMIさんもユーロビートから撤退します。

テクノの全盛期、ユーロビート・ブームは完全に去ったといわれるタイミングで…

 

まさにHAVANA組が勢いにノってきた頃、国内ではFLEAの新しい楽曲は

どのメーカーにも収録されず…実に10ヶ月ほどの空白期間が。 ギギギ…(しつこい)

その後92年の9月、ようやくJIMCOさんによってアラビアンカの作品を取り上げた

新シリーズ「ALABIANCA DANCE」がスタートし、FLEA作品の収録も再開しましたが…

CDのプレス数も少なかったためにこの時期のFLEA作品群は

国内ではほぼ幻の存在といってもいいでしょう(リストのピンク部分)。

しかしながら過去の未収録作品を再び発掘するなど、

このメーカーの功績は国内ユーロCDの歴史の中でもひときわ輝いています。 ビバ。

 

…後半にはなぜかFRED VENTURA組がまた曲提供していて、

F. Di Bonaventuraさん自身もヴォーカルで参加しているようです。

「SO REAL / ALBERT O'RYAN」

( F. Di Bonaventura - S. Comazzi - M. Catalano )

作りとしてはハウス寄りで、音的にもいまいち魅力を感じない作品ではありますが…

 

そして93年、JIMCOさんの「ALABIANCA DANCE」シリーズ終了と共に

FLEAレコードもまた、その歴史に幕を下ろすことになります。

以降、VICTORさんにより単発のコンピがリリースされることはありましたが

すでに過去の存在と化したFLEAは、一部のヒット作を除き

徐々に人々からその名前を忘れ去られていくことになります…

 

現在ではFLEA楽曲の権利の所在はバラバラになったようで、

ソニー・ミュージックさんあたりが所有しているものもあるみたいです。

avexさんとかが一挙獲得してどーんとコンピでも出して欲しいところですが

無理だろうなあ…とほ。